スタートアップの資金調達の歴史から見るセキュリティトークンオファリング(STO)

初めまして。Yenomインターン生のあさの @nononoasa です。

本日からブロックチェーン業界の動向について調べたこと、考えたことをこのブログでまとめていきます。 経済学部所属のライターがブロックチェーンのサービスについて調べたことを、わかりやすく解説します。大きなテーマを重要なトピックごとに掘り下げていき、サービス内容、可能性や課題についての記事を書きます。 今回のテーマは資金調達の進化とセキュリティトークンオファリングの可能性についてです。

現在、株式をトークン化して資金調達を行うセキュリティトークンオファリングがブロックチェーン技術で注目されています。今回は「なぜ株式をトークン化して資金調達をしていくのか」ということをスタートアップの資金調達の歴史を通じて確認していきます。

本記事は、セキュリティトークンオファリングまでの歴史を解説した以下の記事を、著者の許可の元、参考にしています。

hackernoon.com

セキュリティトークンって何?

f:id:nonoasa:20180810115055p:plain
セキュリティトークンを利用した証券取引
セキュリティトークンは、株式や債券などのセキュリティ(有価証券)をトークン形式にしたものです。セキュリティをトークン形式にするってどういうこと?という質問に対してまずは考えていきます。 セキュリティトークンのトークン化対象は株式だけでなく、商品や債権等もありますが、わかりやすいので株式について考えていきます。今、人々が株を持っているとして、その株はどのように管理されているのでしょうか。

上場株の場合

  • 電子化され、証券振替機構に登録されています

未上場株の場合

  • ペーパーの株券
  • 証券会社に電子的に登録されている
  • 株式会社の株主名簿に登録されている
  • 株式の売買契約書を保有している

など様々な形式で株式管理されています。 このように株式は、中央の管理者が責任を持って管理しているか、そうでない場合は、様々な方法で管理されていました。しかし、2018年、新たに株式をトークン化して各々が管理することができるセキュリティトークンと呼ばれる手法が出てきました。これはブロックチェーンの技術の発達によって可能になり、現在このセキュリティトークンが注目を浴びています。セキュリティがトークン化されると各々の電子ウォレットにトークンが入っていることが、株式を持っていることを証明することになります。

そしてセキュリティのトークン化は企業の資金調達方法にもメリットをもたらします。企業の資金調達の歴史を確かめながら、なぜ企業が株式をトークン化して資金調達をする必要があるのかについて説明していきます

スタートアップの資金調達方法の進化

f:id:nonoasa:20180810115326p:plain
スタートアップの資金調達の多様化

シリコンバレーのベンチャーキャピタルの誕生

1970年代から1990年代、シリコンバレーには起業家を支援する、ジョン・ドーア、メアリー・ミーカーなど伝説のベンチャー投資家が存在しており、雇用やユーザー・顧客獲得など、スタートアップの成長に重要な役割を果たしていました。起業家はどの投資家に出資してほしいかを考えており、多くが一流の投資家からの資金援助を望んでいました。

例えば、1999年にクライナー社のベンチャーキャピタリストであるジョン・ドーアは、30億ドルの利益を期待して、1250万ドルの資金をグーグルに提供しました。ジョン・ドーアは資金提供をしただけでなく取締役についたようです。一方、グーグル側はやはり、VCから投資要望が殺到していましたが、当時一流とされていたという理由からクライナー社を出資元として選択したようです。

ベンチャーキャピタルの問題

1990年以降、VC業界が成長し、有名なVCがより巨額のファンドを準備するにつれて、投資を受けるベンチャー企業も巨大になっていきます。すると、巨大な資金を必要とするベンチャー企業が、有名なVCから毎回資金援助を受けるようになり、一部のVCは排他的になっていきました。

ここで問題が生じます。投資の決定には様々な要素があるが、事業を行う経営者の素質が重要な要素となるベンチャーキャピタル業界では、輝かしい経歴や投資家とのつながりを持った人に優先的に投資がなされる傾向がでてきました。適切なプロジェクトに投資をできなくなった結果、目標のリターンが得られないVCも存在しました。

一方で、資金調達をしたいベンチャー企業も同様に苦悩に陥ります。生活用品などを製造するスタートアップなどでは、輝かしい経歴を持っていない起業家は資金を得られなかったからです。CEOのネームバリューで投資が決まってしまう側面をもつベンチャーキャピタルの世界では、そうでない起業家が投資を受けるのに不利な世界になっていました。

クラウドファンディングプラットフォームの誕生

そのような問題が生じてくる中で、生まれてきたのが、クラウドファンディングです。特に、初期に多額な資金が必要で、リスクが高いハードウェア会社などは、VCからの資金調達で困難にぶつかりました。そこで、彼らは、2009年以降、ネット上で様々な投資家や将来のユーザーからクラウドファンディングで資金調達を始めます。クラウドファンディングの利点は、資金援助をする人が、その製品を欲しいと思っている顧客であるため、市場のニーズを証明できることです。

クラウドファンディングはネット上で資金を募集する方法であるため、ウェブ広告やSNSの発展とともに成長しました。VCを相手にするだけでなく、一般の人々にも動画や広告を通じて製品情報をわかりやすく発信して、様々な人からの資金調達を可能にしました。

クラウドファンディングの事例~oculus VR~

Facebookに買収された有名なVRデバイスoculus VRを作っているOculus inc.はクラウドファンディングプラットフォームkickstarterで当初資金調達をしました。資金提供者へのメリットは以下のものが上がっています。

US$15以上の提供者:oculus riftのポスターが手に入る

US$75以上の提供者:oculus riftのtシャツが手に入る

US$275以上の提供者:試作品oculus riftの組み立てキットとdoom 3というゲームが手に入る

以上は一部ですが、資金提供者は限定の商品を素早く手に入れる権利を手に入れました。しかし、株式とは違って、会社を保有する権利を手に入れたり、その権利を売り買いすることで利益を手に入れることはクラウドファンディングプラットフォーム上ではできませんでした。

ICOの誕生

クラウドファンディングでは、資金援助の証は調達企業のプラットフォーム上で管理されており、出資者が請求できる権限も非常に限られたものでした。そこで、ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンプラットフォームが完成し、プラットフォーム上で決済ができるようになりました。新しい事業者はブロックチェーン上で決済できるトークンを発行し、支援者はこのトークンを購入することで投資家に資金援助をしていました。

ICOもクラウドファンディングと同様に企業の資金援助を支援しています(ICOを行うのは企業だけではない)。

ただ、クラウドファンディングとICOで異なることはユーザーがトークンを所有するようになるということです。トークン購入者がサービスや仮想通貨の所有権を他の管理者なしに直接主張できるようになっていきました。

ICOの資金調達は、理論的なホワイトペーパーを執筆することから始まります。このホワイトペーパーを元に、具体的な製品がまだできていなくても、金融機関やVCの助けを借りずに、資金調達をすることができるようになります。

ICO事例~Huobi~

例えば仮想通貨取引所のhuobi global inc.はhuobi tokenと呼ばれるトークンを発行して3億ドルの資金を調達しました。このトークンは、のちに書く予定ですがユーティリティトークンの形式で発行されています。ユーザーはhuobiに協力することで以下のメリットを手に入れることができました。

取引所の手数料に対する支払い(VIPランクに応じて(50/40/30/20/10%のディスカウント)) Huobiが提供するセキュリティ口座の解説手数料をHTトークンで支払える 人気トークン投票に参加できる(勝者はAirDropを獲得できる) Huobiで発行された新規コインの優先受け取り件の獲得 Huobiの取引所に預けられた仮想通貨は100%返金保障付き huobiによるトークンの買い戻し(バーン)

このように、トークンを所有することでhuobiのサービスに安価でアクセスすることができたり、huobiの運営に参加できるようになります。しかし、huobiがあげた収益に対する請求権がユーティリティトークンにはないため、このトークンは株式と異なります。 また、トークンで資金調達を行うサービスはブロックチェーンを利用しますが、「企業」という事業体として資金調達をする事になるため、ユーティリティトークンでの資金調達は適していないという欠点もありました。(この点についてはまた別の記事で詳細について記載する予定です)

アメリカ証券取引委員会によるユーティリティトークンの規制

当初ICOは規制が少なく、トークンを発行することで資金調達を行う企業・サービスが増えていました。しかし、企業が発行するトークンは証券(株式)に近い性質を持っているものも多く、アメリカ証券取引委員会は、投資家保護のために規制を行うようになっていきました。トークン間の区別についても別の記事で詳細について記載する予定です。

STOの誕生

サービスに対するアクセス権をトークンとして発行するユーティリティトークンの枠組みで、資金調達を行うことが難しくなった企業は、株式などのセキュリティをトークン化しようと試み始めます。そして、証券をトークンとして発行することによって資金調達を行うSTO(セキュリティトークンオファリング)が行われるようになります。

例えば、VCのサイエンスブロックチェーン社はセキュリティトークンを発行して資金調達を実際に行いました。このトークンの所有者は、以下の2つの権限を有しています。

サイエンスブロックチェーン社のポートフォリオにある資産の所有権を有している。

配当金を受け取る権利を有している。

このようにセキュリティトークンは株式と非常に似た性質を持っています。しかし、このトークンにはセカンダリーマーケットが存在しておらず、トークンの価値が上がったら売却することで利益を出すことができませんでした。

セキュリティトークン取引市場の誕生

そして今年、coinbaseなどの大手取引所がセキュリティトークンの取引に対応することを発表しています。この取引所は、参加券を得た機関投資家のみが投資を行えるため、ユーティリティトークンとは異なります。しかし、セキュリティトークンの課題の一つであった流通市場が確保されたため、投資家は値上がりしたトークンの売却益を確保できる基盤が成立するようになりました。

セキュリティとは何か、については1933年にアメリカ証券取引委員会は以下のものに定めています。

株式 債券 手形(約束手形) 投資契約 有価証券先物 利益分配契約への参加件

まとめ

従来は、スタートアップの資金調達はベンチャーキャピタルが中心でした。しかし、ネットの発達とともにクラウドファンディングが生まれ、様々な人から資金調達ができる可能性が広がりました。そして、現在、ブロックチェーン技術の台頭によりクラウドファンディングの課題を克服したICOやSTOが生まれています。これらを利用した資金調達により、投資家はネット上で出資しやすくなるため、スタートアップの資金調達はますます多様化していくと考えられます。

参考

A Brief History of Security Token Offerings: How Did We Get Here?

https://www.kickstarter.com/projects/1523379957/oculus-rift-step-into-the-game/rewards

VC・経営:グーグルの初期: ベンチャーキャピタル日記

Dapps(分散型アプリケーション)のマネタイズ事例をまとめました。 - Gunosy Blockchain Blog

https://blog.coinfi.com/the-value-of-exchange-tokens-comparing-binance-huobi-and-kucoin/

https://www.huobi.pro/en-us/ht/intro_worth/?state=1

ICOトークンの5分類について。違和感とその理由。 | ビットコイン研究所